テディ・ウィルソン(1912 - 1986)
ベニー・グッドマンのコンボで活躍し、スウィングジャズを代表するピアにストの一人がテディ・ウィルソンです。
1912年11月24日にアメリカテキサス州で生まれたテディ・ウィルソンは、若い頃にピアノとバイオリンを学び、やがて当時アール・ハインズのバンドが専属で演奏していたシカゴのグランド・テラス・カフェで、ハインズの代役としてバンドで演奏するようになりました。
そして1935年、ウィルソンはクラリネット奏者ベニー・グッドマンのトリオに加わりました。
メンバーはクラリネットのベニーグッドマン、ドラムスがジーンクルーパー、ピアノがウィルソンで当時はまだ黒人差別などもあり、白人の人気バンドに黒人のメンバーを入れるという事は異例の出来事でした。
このトリオには後に更なる黒人ミュージシャン、ビブラフォン奏者のライオネル・ハンプトンが加わる事になります。
当時人気絶頂のベニーグッドマンのバンドに加入した事とそのすばらしいピアノプレイにより、彼は一躍有名になります。
1955年に制作された映画『ベニイ・グッドマン物語』にはウィルソンはグッドマンを除く他メンバーと共に本人役で出演しベニーグッドマンの役は(司会、コメディアンで俳優のスティーヴ・アレンが演じました。)、その華麗な演奏を聞かせています。
テディ・ウィルソンの演奏はやはり左手のストライド奏法を取り入れていましたが、他のストライド奏法のピアニストのような強いアクセントやパーカッシッブなタッチは抑えられ、ベースラインと10度音程の連続して流れるような優雅なスタイルでした。
また、ウィルソンのピアノの右手のラインはハインズのようなオクターブ奏法は使わず、シングルトーンで速くメロディアスなラインを紡ぎました。
クラシック音楽の影響を受けていたウィルソンのピアノは、リズミックにスウィングしながらもリリカルな美しさを併せ持つスタイルで、その演奏は多くのファンの心をつかみました。
グッドマンのバンドを離れた後も自身のビッグバンドやセクステッドを結成し演奏活動を精力的に続け、ヨーロッパや日本での公演も数多くこなし、現地で日本やヨーロッパのミュージシャン達とも数多く共演したレコードを残しています。
また、ジュリアード音楽院で後進の指導にも当たりました。
1960年代からはニュージャージー州ヒルズデールで暮らし、最晩年まで演奏活動を続けていましたが1986年7月31日に73歳で亡くなりました。
After You've Gone右手のシングルトーンによる素早く流れるようなフレーズはの後のビバップジャズを代表するピアニスト、バド・パウエル等にも影響を与えました。
1938年に録音されたウィルソンのソロピアノ集です。左手はストライドでありながら10度がレガートで内声を奏で、右手の華麗なシングルトーンのラインが彼の特徴です。